数ある建築基準法の解説書の中で、特にビジュアルに力を入れた2冊の参考図書を紹介します。
それぞれ、
4コマ漫画でサクッと分かる建築基準法
と
リアルイラストでスラスラわかる建築基準法 (建築知識の本)
です。上の写真の2冊ですね。
私も一応建築法規関係のプロということで食ってますので、この2冊がどんな本なのか、どんな方に適しているかなどを紹介していきたいと思います。
4コマ漫画でサクッと分かる建築基準法 | ||||
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リアルイラストでスラスラわかる建築基準法 (建築知識の本) | ||||
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「4コマ漫画でサクッと分かる建築基準法」はいろんなテイストのマンガで理解のきっかけを与えてくれます
紙面の紹介かと思いきや、まさかの手書きのメモの登場です。私が書きました。
これは理由がありまして、この記事を作成するにあたりエクスナレッジに「書籍をブログで紹介していいですか?」って聞いてみたんです。
数日後に返事をいただいたんですが、「著作者からの依頼以外、掲載NGでっせ。ほな。」とのことでしたので、紙面の構成はメモでなんとなく雰囲気を掴んでいただくことになりました。
冒頭で表紙は載せてますが、表紙くらい良いですよね?もしダメだったら教えて下さい。表紙も手書きのメモに差し替えます!!
ポイント1:マンガはあくまで導入
まずこの本は上のメモのように、基本的に見開き2ページで構成されています。
右ページはマンガ、左に各テーマごとのポイントがまとめられています。
右ページをどどんと独占するマンガからも有用な情報を得られるものもありますが、やはりそこはマンガ。
オチをつけないといけないという使命がありますから、建築基準法と関係なくなってしまっていることもしばしば。
これを紙面の無駄遣いと取るか、殺伐とした建築基準法解説に潤いややすらぎを与える潤滑剤と取るかは読者次第ですが、後者を狙ったものであることは疑いの余地はありません。
敷地・面積・高さ・防火・避難・居室・用語という大きな項目ごとに、マンガの書き手が異なります。
それぞれ独自のテイスト、世界観がありますが、私が気に入ったのは避難の項目に出てくる猫ですね。
また、居室の項目は鶏の親子がメインキャラなのですが、居室の最後の項目、「無窓居室」のマンガは涙なしでは読めませんのでぜひみなさん、ご自分の目で確かめてみて下さい。
ポイント2:左ページはこれまでのビューロの本の再編集
左ページの解説は、これまでいくつか買っているビューロベリタス監修の参考書とほぼ同じような構成、記載となっています。
つまり、最近ビューロベリタス監修の参考図書をお持ちの方にとっては「またか」という感情を産まざるを得ないでしょう。
1ページでコンパクトにまとまってはいますが、やはり情報量の不足を感じる部分もあります。
とはいうものの、補足としてコラムのコーナーも要所ごとに差し込まれていますし、何より「サクッと分かる」ことが大命題なので、細部に渡る解説まではしていないわけです。
つまり、最初からわかっていることですが、この本のターゲットは初学者、建築業界での経歴が短い方、建築基準法について勉強しなくてはならない立場に急に追い込まれた方、などです。
基本的な法チェックや確認申請図書の作成で、最低限押さえておくべき内容をわかりやすく網羅している参考図書ということです。
ポイント3:冒頭の法改正情報と巻末の特集は使えます
そんなやさしめレベルの図書ではありますが、実務レベルで役に立つと思える記述もありました。
それはこの本の冒頭にある、「近年の法改正情報」、巻末の「用途変更のための法知識」「構造計算要否判定フローチャート」です。
まず、近年の法改正情報を完結にまとめてある部分は、緩和事項に関する記述が多いため、古い知識で凝り固まっている方に効果的だと思います。
これまでの決まりきった設計にとらわれず、緩和を適用してプランの自由度向上やコスト削減に活かせるでしょう。
用途変更のための法知識は、既存不適格で残せる部分、用途変更時にも検討すべき項目がまとめられていますから、用途変更やリノベーションといったプロジェクトで役に立つでしょう。
三番目の構造計算要否判定フローチャートは、「この建物、建築確認に構造計算書の添付は必要なの?」というよくある、しかし、ぼんやりとしかわかっていないあやふやな部分をきっちりと理解し、要否を判定できます。
規模、構造種別、構造計算ルートなどの条件をもとに、計算の有無から構造適判の要否まですっきりわかります。
意匠設計担当の方でも、構造計算が必要かどうかは判定できる必要があるので、非常に役に立ちます。
4コマ漫画でサクッと分かる建築基準法 | ||||
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リアルイラストでスラスラわかる建築基準法 (建築知識の本)はキレイなイラスト(パース)で空間がよくわかります
こちらも同じエクスナレッジなので、4コマ漫画のヤツと同様に写真はNGですから、手書きメモで構成をご紹介します。
基本的に見開きで大きく解説している場合が多いですが、少なくとも1ページまるまるを割いて解説しています。
ポイント1:イラスト(パース)がリアルでよく分かる
本のタイトルにもなっていますが、イラストがリアルです。しかも上手です。
ついつい、絵に見入ってしまって、建築基準法に関するチェックのことを忘れてしまうこともしばしばです。
4人の方が描いているようなのですが、かなり尊敬します。
こんな絵が描けたら、もっと自分の人生が変わっていたかも、などとしょうもないことを考えたりしてしまうくらい、うまいです。
そして、本の大きさが大判なのも良いですね。
デスクの上で広げておくと少々場所を取りますが、目を凝らして小さな絵を睨むのも疲れます。
さらに、プライドさえ捨ててしまえばこの本をクライアントに見せながら建築基準法のわかってもらいにくい部分を説明したり、という使い方も可能です。
ポイント2:現場経験の少ない人にとっての救世主
設計経験、現場経験の少ない方にとって、文字情報だけで建物のことを理解するのは非常に難しいもの。
そこでこの本のように、ただでさえわかりにくい建築基準法をビジュアルで理解できるというのは実に心強い存在になります。
職場が都会か、田舎かという違いでも関わってくる基準法の項目は変わってきますから、こういう本は役に立ちます。
合わせて、木造、鉄骨造など構造別に工法ごとの特徴、工程ごとのポイントなどがわかる参考図書も読むと一層理解が深まると思います。
現場に行く時間がなかなか取れず、ずっと事務所で図面を書いているという方に、ぜひおすすめしたいと思います。
リアルイラストでスラスラわかる建築基準法 (建築知識の本) | ||||
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ゼロからはじめる「木造建築」入門 | ||||
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ゼロからはじめる [S造建築]入門 | ||||
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